これまで労働安全衛生に関しては、OHSAS18001や、厚生労働省から平成18年に発行されたその改正版である「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針について」、さらには中央労働災害防止協会(JISHA)などの業界団体が定めるガイドラインをはじめ多くの標準(規格類)が存在し、運用されてきましたが、国際的な労働安全意識の高まりから、初の労働安全衛生国際規格として「ISO45001 労働安全衛生マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」が発行されました。
労働安全衛生マネジメントシステムの目的は、安心・安全で健康的な職場を提供することにより、労働に関わる負傷や疾病の発生を防止し、労働安全衛生パフォーマンスを継続的に改善することにあります。
そのため、労働安全衛生マネジメントシステムを導入し運用することは、組織が戦略的な方向性を考慮に入れ、自らの判断により決定することであり、それを成功させるために、率先垂範的なリーダーシップをもって強力なコミットメントを発信し、すべての階層・部門を含めた全社的な人々が参加することが鍵となります。
『ISO/IEC専門業務用指針,第1部 統合版ISO補足指針-ISO専用手順』の附属書SLに規定する上位構造、共通の細分箇条の題名、共通テキストならびに共通の用語および中核となる定義を参考にしています。
例えば、ISO9001、ISO14001、ISO/IEC27001等のマネジメントシステム要求事項と構成が同じであるため、これらとの統合マネジメントシステムを容易に構築することができます。
内部の状況および外部の状況を考慮して決定した、労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果を達成する、組織の能力に影響を与える課題や、当該マネジメントシステムに関連する利害関係者の要求事項は、時間の経過とともにその様態が変化します。リスクマネジメントプロセスをこれに適用することにより、負傷や疾病の予防を確実なものとし、適切なリスク管理体制が確立していることを実証することができます。
リスク及び機会への取組みを別枠に捉えるのではなく、確実に労働安全衛生マネジメントシステムへ取り込むことにより、意図した成果を達成する能力を強化できます。
この規格のマネジメントシステムアプローチはPlan-Do-Check-Act(PDCA)の概念に基づいており、これは継続的な改善を達成するために組織が用いる、反復的なプロセスです。
このPDCAサイクルは、あらゆるプロセスおよび労働安全衛生マネジメントシステム全体に適用できます。
PDCAサイクルは、次のように簡潔に説明できます。
次の図は、箇条4~箇条10 がPDCAサイクルとの関係でどのように運営されるかを示したものです。
PJCは、CSRのテーマの1つである労働安全衛生マネジメントの成功の重要ポイントは「倫理の二重性の解消」「ガバナンス・コンプライアンス重要視」「本社からは見えない現場の可視化」の3つであると考えます。「規程」がいくら整備されていても、「記録」がいくら用意されていても、健全なガバナンスから始まる健全なプロセスが連続しなければ、労働災害の発生リスクは減少しません。
「倫理の二重性」や「ガバナンス不全」が、「ヒヤリハット」と事故の温床なのです。
PJCは、フレームワークとしてISO45001を活用しながら、「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」の内部統制の基本的要素を注視し、整備の有効性と活動の有効性を検証していきます。
大会社および内部統制の決議を行った企業で、労働安全衛生上の事故が発生した場合に、ISO45001が形骸化していると、役員は善管注意義務や使用者責任(民法715条)を果たしていなかったとみなされ、損害賠償などを求められた場合も非常に不利です。マネジメントシステムの形骸化は、経営者や役員にとって重大な賠償を伴うものであると考えなければなりません。
PJCは、役員を守るPJCERMという統合リスク管理体制の手法を有しており、ISO45001を形骸化させない統合リスク管理体制を中心とした内部統制システム構築支援も実施しています。