皆さんの内部統制整備は“「投資家の保護」→「財務報告の信頼性」確保のための仕組みづくり”となってはいないでしょうか?特に会計士との協議(“顔色伺い”を含め)の中ではこの目的が強調されているような気がしています。確かに『財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準』(以下、「実施基準」と記す)のP4(5)「4つの目的の関係」には、「財務報告の信頼性以外の他の目的を達成するための内部統制の整備及び運用を直接的に求めるものではない」とされています。しかし、もう一度「実施基準」を読み返していただきたい。4つの目的の一番目は、「業務の有効性と効率」となっています。金融庁企業会計審議会委員で内部統制部会長を務める八田進二先生は、その著書『これだけは知っておきたい内部統制の考え方と実務』(日本経済新聞社)P64 にて「経営管理を目的とする以上、内部統制の目的の一番は『業務の有効性と効率』です。」と書いておられます。
文書化や第三者(監査人、会計士)に見てもらうことだけを目的に内部統制を行うと“無理、無駄”が発生し、経営負荷になってします。「やってよかった内部統制」を実感するには、この「業務の有効性と効率」を組織がしっかり考えて、取り組む必要があります。
すでに内部統制の整備フェーズ及び評価、修正のフェーズに入っておられる皆さんは、この目的が忘れられていないかを確認することをお勧めします。
あるお客様では、一見複雑に見えた業務ですが、各自、部署がばらばらに管理しているEXCELのファイルを棚卸し、目的に応じてファイル名を統一した結果、EUCの管理を行えば業務フローがある過程から共通で行え、財務報告の信頼性も確保できることが判ったのみならず、次年度から進める情報投資の検討課題が明確になりました。また、ある製造業のお客様は作業手順の文書化(操作するコンピュータの画面コピーに注意点、作業の責任者を書いたような簡単な文書)を内部統制の整備と併せて行い、多能化の下地づくりを進め、人的資源の効率化を進めるなどの工夫をしています。
標準化によるミスの防止、多能化の準備、情報の共有化(コミュニケーション強化)による意思決定プロセスの見直しなど、「内部統制の整備に有効化、効率」の視点を再度入れ直してはいかがでしょうか?