かれこれ1年近くアサーションと付き合ってきましたが、なかなか難しい概念で、スッキリしません。今回はアサーションについて整理してみたいと思います。
実施基準では、実在性を「資産及び負債が実際に存在し、取引や会計事象が実際に発生していること」と定義しています。同様に、他のアサーションについても一応は定義していますが、とても抽象的で曖昧です。どの本を読んでも、アサーションについては、実施基準の定義をそのまま引用しており、あまり参考にはなりません。
例えば、実地棚卸で「預り品を誤って棚卸資産にカウントしてしまう」というリスクに対するアサーションはどれでしょうか?実際には存在しない資産を計上してしまうので「実在性」でしょうか。それとも、企業に帰属していない資産を計上してしまうので「権利と義務の帰属」でしょうか。
また、売上で「商品の返品の処理が漏れる」というリスクはどうでしょうか?返品が処理されない分だけ、実在しない売上・売掛金が計上されるので「実在性」でしょうか。それとも、返品という取引や会計事象が記録されていないので「網羅性」でしょうか。
他にも様々な事例が考えられますが、これらの混乱は、すべてアサーションの定義が曖昧で抽象的であることが原因のようです。
この混乱を解決するには、個別の勘定科目やサブ・プロセスでアサーションの定義を具体的な定義に置き換える必要があります。
例えば、「商品」という勘定科目で、「権利と義務の帰属」というアサーションを定義しなおすと「預り品や他社分の商品が含まれていない」ことであり、前述の例はこれに該当します。
もし、「売上計上」というサブ・プロセスで「権利と義務の帰属」を考えると「契約が正当に終了しているものだけ計上する」となるでしょう。(同様に、前述の「返品」の例をご自身で考えアサーションを判断してみてください。)
要するに、個々の勘定科目や業務プロセスに対するアサーションを具体的に理解するということが重要だと思われます(また、この理解が「3点セット」の品質にも直結します)。そのアサーションの達成を阻害するリスクを認識し、識別する。そして、最終的に認識し、識別したリスクをすべて潰すことで、「当社の財務諸表は正確である」という「経営者の主張(=アサーション)」が達成されるのではないでしょうか。