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【コラム3】 内部統制の基礎は企業文化にある

内部統制構築に際して担当者の皆様からそれぞれの現場で実際に運用する方法に関するとまどいをよくお聞きします。企業には文化・社風・組織形態等の違いがあり、単純にこうした方がいいという絶対的な方法や基準はありませんが、この運用というのは実は大きな問題です。

内部統制構築というと、規程等の文書を整備することで目途がつき、大体出来上がったと思われたり、有効性の評価はどうしたらいいのかという方法論の話になりがちですが、企業の従業員全員が一度決めたことは徹底して行うことができる「ミニマムスタンダードの見極め」が大事です。

「ミニマムスタンダード」は、監査法人の内部統制監査報告書で無限定適正意見を表明していただくことも一つの基準ですが、企業が経営者の理念や方針、倫理感に基づいてここまでしなければならないという基準やルールを「主体的に決める」ということが最も大切です。この場合、基準やルールというと何かまた新しい規程等を作成しなければならないと思われるかもしれませんが、基準やルールというのは必ずしも明文化したものばかりではありません。「暗黙の了解事項」というのがあります。これが、「企業文化とか社風」と呼ばれるものだと思います。

監査法人等による監査や評価のために客観的に確認できるように一定の文書化は必要ですが、それを支えるのはこの「企業文化とか社風」です。従業員全員が基準やルールを守って行動するというのは、その基準やルールに関する教育訓練も大切ですが、健全な「企業文化とか社風」をどう醸成するかという仕組み作りも併せて必要です。これはどちらが先かということではなく、同時にかつ継続して行うことです。そうしないと表面的・形式的には基準やルールを守って行動しても、何かあったら隠そうという心理が働きます。虚偽記載ということでは、このようなことが一番問題と言えます。こういうことを考えると「全社的な統制・全般統制と業務処理統制とはシームレスにつながっている体系」だということがご理解いただけると思います。

さらに、企業の「ミニマムスタンダードは固定的ではない」ということもよく理解しておく必要があります。しばしば報道されている食品会社等の不祥事についても、消費者・顧客が厳しい目で見ていることがわかります。企業がこれでいいと思っていることと社会の認識とにずれがないかをつねに検証する必要があります。その意味で「ステークホルダーとのコミュニケーション」が大事であることがわかります。これが、「CSR」が企業に求められている背景の一つでもあります。このように考えていくと、内部統制構築が「CSR」等の企業の価値向上を図る活動の一環だということがご理解いただけると思います。

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