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【コラム5】 ガバナンスの可視化-「3点セット」で会社は守れない

打合せの際、企業の担当者様がしばしば口にされるのは、まず文書化についての不安です。また、「文書化=3点セット」と考えられておられるケースも多く見受けられます。
企業の担当者様にしてみれば、今回の金融商品取引法には具体的手引きがないことや、監査法人がその監査を行う際に用いる監査手段となることから、目にみえた形式を要求されている3点セットの作成に固執されてしまうのかもしれません。

しかしながら、今回企業に求められている法の趣旨は、会社の組織がどのように日々運営され、どのように意思決定されているのかを投資家に対し財務報告書の信頼性の観点から可視化していくことが前提ではなかったでしょうか。つまり、「3点セットを作りなさい」ではなく、経営者や取締役会、監査役の機能を含めた健全な「ガバナンスの可視化」であるはずです。

最近様々な企業不祥事がマスコミで大きく取り上げられていますが、これは企業体質にのみ起因するものではなく社会環境が大きく変化していることにも起因していることを皆様は強く感じられているはずです。企業はあらゆるステークホルダーから、なかでも公益通報者としての従業員からも厳しく評価されるようになってきたと言えるでしょう。そのために、企業リスクの回避を目的の一つとして、今回の構築活動を進めていく必要があるのではないでしょうか。

3点セットがあれば会社を守れますか?…と端的に質問をさせていただいたのに対し、「YES」とお答えになる方はいらっしゃらない筈です。(ちなみに、文書ソフト選びを重視されている担当者様に、文書ソフトがガバナンスのプロセスまでコントロールできますか?…と質問をさせていただいても、答えは「NO」でした。)

3点セットを否定するわけではありません。もちろん監査法人の理解がなければ適正意見は得られないので、3点セットは重要です。ただ、3点セットの考え方として、3点セットを作るために会社組織を合わせていくのではなく、会社組織が確立された上でこれらができてくるのではないでしょうか。

法の趣旨を捉えて構築を行うのであれば、3点セットから入るのではなく、まずやはり自社内のプロセスを棚卸しし、評価し、適正な文書を見極め、必要最低限の文書を作成していくことが大事であり、それが結果的に健全な「ガバナンスの可視化」に通じるものになるのだと思います。企業担当者様にとって3点セットの作成が大事とお考えになるのも理解できますが、日常的に運営されていく会社組織に必要かつ持続可能なガバナンスを構築することにも意識を向けることが今必要であると考えます。
「ガバナンスの可視化」も簡単な構築作業ではありません。単なる体裁を整えただけの実効性のない文書化は、現場が動かず形骸化を生むことになります。そうならないためにもしっかりと企業内部を評価し、必要最低限の実効性のある文書化をお勧めします。数が少なく簡素であっても、それができていれば持続可能でかつ機能するマネジメントはできるはずです。

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