みなさん、こんにちは!
今回からは、サステナビリティ推進に向けた構築ステップごとの構築ポイントや留意事項について解説してまいります。
第2回は、「サステナビリティ推進活動における現状分析」をテーマとして進めていきます。
サステナビリティ推進に向けた構築の基本的な考え方ですが、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクルを繰り返すことにより業務を継続的に改善していくというP.D.C.A手法ではなく、CAPDo(キャップドゥ)方式を構築の基本としています。 現状を分析しないままP(計画)から着手した場合、自社の課題と整合性がとれない計画やステークホルダー(利害関係者)のニーズ・期待とかけ離れた必然性のない計画が立案されるリスクが高くなります。したがって、ペリージョンソン コンサルティング(PJC)では、初めに現状を評価(Check)し、改善すべき課題を理解(A)した上で計画(Plan)を立て、それを実行(Do)することで、より効率的で有効な成果が得られることを目的とするCAPDo(キャップドゥ)方式での構築をお勧めしています。
それでは、サステナビリティ推進における現状分析手法について解説いたします。
前回のコラムでお話した通り、「サステナビリティ」とは、企業の立場で、世界を持続的な状態にするために、「環境」「社会」「経済」の観点において持続可能な状態を実現する活動をいいます。 「環境」(Environment)とは、再生可能エネルギーの活用、水資源の節約、海洋汚染対策や森林保存など、事業活動を通じて環境保全上の支障となる環境負荷の低減や環境保全を促進する活動をいいます。「社会」(Social)とは、平等に教育を受ける機会の提供や多様性のある働き方改革など、社会インフラ、保健、医療、衛生、社会福祉や教育等の社会サービスを改善する活動をいいます。「経済」(Economic)とは、環境保護や社会の課題解決につながる商品開発および販売活動など、企業や経済全体が将来にわたって社会に貢献し利益を出して成長を続ける活動をいいます。
CAPDo(キャップドゥ)方式で構築する場合には、この3つの分野において、自社がどのような方針・目標を掲げ、どのようなサステナブルな活動を実施しているのか、まずは現状を評価(Check)することから始めていきます。 ・・・と言われても、「環境」「社会」「経済」の観点でサステナブルな活動をどのように調査していいか、具体的な調査項目や方法が分からないですよね。
そこで今回のコラムでは、サステナビリティ推進状況を現状分析する際にとても参考になるガイドラインをいくつか紹介いたします。
まず1つ目は、ISO26000:2010 社会的責任に関する手引き(Guidance to Social responsibility)です。これは、組織の「社会的責任」に関するガイダンスとして、持続可能な発展への貢献を最大限に発揮することを目的として発行されました。ISOと聞くと認証機関の審査を受けなければならないと思う方も多いといますが、このISO26000は、認証を目的とするものではなく、あくまでも活動の指針として利用するものです。
このISO26000が定める活動すべき課題として、①組織統治、②人権、③労働慣行、④環境、⑤公正な事業慣行、⑥消費者課題、⑦コミュニティへの参画およびコミュニティの発展の7つに細分化され、各分野ごとにどのような活動を行うことが望ましいのかについて解説しています。これは、現状を評価する上でも、活動方針や活動計画を策定する上でもとても参考になりますね。
2つ目は、GRI (Global Reporting Initiative:サステナビリティ報告基準)です。GRI は、サステナビリティに関する国際基準と情報公開の枠組みを策定することを目的とした国際的な非営利団体で、「経済」「社会」「環境」の持続可能な発展への貢献を説明することを目的として、2016年10月に「GRIスタンダード」を発表しました。
GRIスタンダードが定める「共通スタンダード」には、経営理念やガバナンス・コンプライアンス等に関する項目が定められており、「項目別スタンダード」には、経済(調達慣行、腐敗防止、反競争的行為など)、環境(原材料、エネルギー、水、生物多様性など)、社会(労使関係、研修と教育、ダイバーシティ、児童労働など)の3分野34におよぶ項目が定められています。企業はこの中から重要と考えるテーマを選んで活動し、報告(情報公開)することになりますので、自社ができる分野から無理なく始めて、中長期的に取り組むべき課題を「見える化」することができます。
3つ目は、EcoVadis(エコバディス)です。EcoVadisは、2007年フランスで設立された「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な調達」の4つの調査項目により企業のサステナビリティを評価する組織です。使用している評価基準は、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、ILO(国際労働機関)、GRI(サステナビリティ報告基準)、ISO26000など国際基準に沿った評価手法を採用しており、業種や企業規模および国に合わせてカスタマイズされた質問票に応えることで、サステナビリティの有効性を総合評価と各カテゴリ別に定量的な評価をしております。なお、総合得点が50点以上(2023年1月1日現在の評価基準)の企業には、点数に応じて、プラチナ、ゴールド、シルバーおよびブロンズのメダルが付与され、Webサイトなどで公表することが可能となります。残念ながら評価結果が50点未満となった企業においても「評価結果」に基づいて改善すべき課題を特定し、不足しているサステナブルな活動を推進していくことも可能となります。有料のサービスですが御社も挑戦して見てはいかがですか。
上記にご紹介した他にも、RBA(米国:電子機器業界のサプライチェーン)やSedex(イギリスの小売業者や監査会社を中心に設立したNPO会員組織)など、業界ごとに社会・環境に配慮した責任ある事業慣行を行うための基準が策定されています。いずれも国際的に高く評価されているものですので、自社に合った利用しやすいガイダンスや評価基準を選択していただければと思います。
このようなガイドラインを利用することで、サステナビリティに関する組織体制の整備状況、方針およびKPI(重要業績評価指標)の策定状況、規程・手順書の整備状況、活動状況、パフォーマンス評価および公開状況など、サステナブルな活動の現状分析を体系的かつ効率的に進めることができると思います。ぜひ活用してみてください。
さて、次回は「サステナビリティ推進に有効な体制の構築」について解説してまいります。